シェフが愛する阿波尾鶏極上レシピ集

阿波尾鶏ときのこのすき焼き鍋

第1回 熊谷喜八シェフの 阿波尾鶏ときのこのすき焼き鍋

日本一の生産量を誇る地鶏“阿波尾鶏”の美味しさを多くの方に知っていただくため、食のプロフェッショナルの協力を得て、阿波尾鶏料理のレシピや魅力を発信するサイトを立ち上げました。
第一回目のプロフェッショナルは、フランス料理をベースに世界中の美味しい料理と日本の良さを融合させた「無国籍料理」の第一人者、熊谷喜八さんです。
全国から延べ2万人の生徒が通った伝説の料理教室「キハチ グルメサロン」では、数多くの家庭でも再現しやすいプロの味を紹介されていました。
主役は阿波尾鶏。1羽丸ごと使ったキハチさんスペシャルの鍋料理です。

材料 6~8人分

阿波尾鶏 1羽
阿波尾鶏 レバー ,ハツ ,砂肝 各適宜
しいたけ ,エリンギ ,しめじ ,えのき茸 ,
舞茸 ,ひら茸など
各適宜
ごぼう 1本
せり 1束
万能ねぎ 1束
豆腐 (絹) 1/2丁(175g)
白玉粉 150g
チキンストック 700cc
オイスターソース 20g
各1個
割り下(*を合わせたもの) 350cc
*酒 90cc
*醤油 230cc
*みりん 140cc
*砂糖 85g

丁寧に育てられた、
旨みと歯ごたえのバランスが良い鶏肉です。

作り方

  • 鶏はもも、手羽、むねなど部位ごとにさばき皮をはがす。身は薄いそぎ切りにし、皮は細切りにする。 レバー、ハツ、砂肝は固いところを除いてそぎ切りにする。
  • 鍋に鶏ガラと1.5リットルの水を入れて強火にかけ、沸いたら弱火にして1時間かけてチキンストックを取る。
  • きのこは石づきを取り、しいたけは4等分、エリンギは薄切り、他のきのこは食べやすい大きさに分ける。ゴボウは斜めに薄く切ってから千切りにし、水に放しておく。せりと万能ねぎは7cm長さに切る。
  • 豆腐に白玉粉を混ぜ、耳たぶくらいの柔らかさになったら、2.5cm位の団子に丸め、中央を押して平たくし沸騰した湯で茹で、水に取る。
  • 大皿に1,3,4を盛り付ける。
  • *を合わせて火にかけアルコール分を飛ばして割り下を作る。土鍋に割り下350cc、チキンストック700ccとオイスターソースを加えて鶏皮を入れ、煮立ってきたら他の材料を煮ながら各自卵につけて食べる。好みで七味をいれてもよい。
作り方素材 調理風景1
kihachi point

KIHACHI’S POINT

●鶏のすべてを濃いめのすき焼き風のタレと生卵で楽しむ鍋
●割り下に加えたオイスターソースがキハチ流
●むね肉、もも肉の薄切りは、少し凍らせておくと切りやすい
●澄んだチキンストックを作るコツは、煮立てないこと、丁寧に濾すこと

インタビュー

Q:阿波尾鶏を召し上がった感想を教えてください。
熊谷喜八
昨年秋に徳島県美馬市にご招待いただき、つきぢ田村の田村隆さんと地元食材をふんだんに使ったディナーイベントを行いました。その時にシンプルな塩焼きをいただきましたが、とても美味しかった。地鶏は旨味がありますが固いものも多い中、阿波尾鶏は肉質が柔らかい。家庭でも美味しく料理しやすい地鶏だと思います。
Q.セネガルとモロッコの両日本大使館料理長、パリでの修行、帰国後は数々のレストランで料理長として腕をふるい、今も日本各地はもとより世界でお仕事をされていますが、その中でよく作られる鶏料理は。
熊谷喜八
よく作るのは、トマトやズッキーニなどさまざまな野菜と軽く煮込むプロバンス風の鶏の煮込みです。野菜は煮込み過ぎず、素材の持ち味を活かして仕上げます。鶏のうま味とそれぞれの野菜の美味しさが味わえる大好きな料理です。
また、モロッコの日本大使館料理長をしていた時代は、鶏のタジンをよく作りました。
タジンは北アフリカの鍋料理で、とんがり帽子のような形の蓋の土鍋を使い、はちみつや果物のソースに漬けた鶏肉、じゃがいもや人参などの野菜、シナモン、サフラン、クミンなどのスパイスと一緒に蒸し煮にします。 シンプルだけど味わい深い料理で、モロッコの人は鶏肉か羊肉で毎日こればかりを食べています。鶏料理としてすぐに浮かぶほど、これはよく作りましたね。
Q:これまでに一番印象的な鶏料理はなんですか。
熊谷喜八
なんといってもシンガポールの名物料理、ヒルマンのペーパーチキンです。
フランス料理界の巨匠ポール・ボギュースも絶賛した鶏料理で、小さな袋に一口大の鶏肉が入っていて、袋ごと揚げられ、皿に山のように出てきます。 袋のまま揚げているので肉がジューシーで柔らかく、熱々の袋を開けながら夢中で食べるのも楽しい。
鶏の下味がポイントなんですが、その味を解明したくて何度も通いました。今では再現できますよ。
Q:今回の「阿波尾鶏ときのこのすき焼き鍋」をおいしく作るコツは。
熊谷喜八
鶏一羽、骨でスープを取り、内臓も余すことなく使い、それぞれの部位の食感や味を楽しめる料理にしました。 割り下にオイスターソースを加えて味のコク、奥行を出したところがキハチ流です。
特に鶏皮は千切りにすることで、割り下と絡んで食感も変わってくる。レバーや砂肝、ハツも薄く切っています。苦手な人も美味しく食べられます。
もも肉やむね肉を薄いそぎ切りにする時は、少し凍らせておくと切りやすくなります。
家庭では鶏一羽をさばくことは難しいので、いろいろな部位を少しずつ用意して、様々な食感と阿波尾鶏ならではの深い味わいを楽しんでください。
Q:料理教室でも多くの鶏料理を教えていらしたと思いますが、鶏を美味しく料理するコツを教えていただけますか。
熊谷喜八
例えばもも肉のソテーは、皮はパリッと身はジューシーに仕上げたいですね。焼き方がポイントです。フライパンに皮を下に置き初め強火、その後弱火にして動かさずに約20分じっくり焼いてほぼ火を通し、返して身側は1分から1分半焼いて仕上げます。
丸鶏でローストチキンを作る時は、初めに油を熱したフライパンで全体の皮面を焼いてからオーブンで調理をすると、皮はパリパリで中はしっとりできます。
から揚げを作る時は、冷めても柔らかく食べたいですね。そういう時は、動物性たんぱく質を壊す酵素が豊富なマンゴーやパイナップルを下味に入れるといいでしょう。
また、家庭では火の通しすぎが多いようです。棒棒鶏などの蒸し鶏は、八分通り火が入ったら火を止めて、そのまま余熱で火を通すとしっとりジューシーに仕上がりますので、ぜひ試してみてください。

シェフのプロフィール

KIHACHI KUMAGAI
熊谷喜八

KIHACHI創業者。 映画「翼よ!あれがパリの灯だ」で映し出されるパリの街並みに憧れ、料理人を目指す。 銀座東急ホテルを皮切りに、セネガル、モロッコ日本大使館料理長に就任後、渡仏。 パリの「マキシム」、「パヴィヨンロワイヤル」で研鑽を積み、 その後当時ジョエル・ロブション氏が率いていた 「ホテル・コンコルド・ラファイエット」でセクションシェフを務める。
帰国後、高樹町「シルバースプーン」料理長、葉山「ラ・マーレ・ド・茶屋」の総料理長を務 め、1987年、KIHACHIをオープン。
フランス料理をベースに、からだに安全で美味しいものにこだわった、ジャンルにとらわれない日本発の洋食としてKIHACHI流無国籍料理を生み出す。
セネガル、モロッコ日本大使館にいた頃には、日本の野菜が手に入らないため、敷地内で自ら畑を作るほど、若い頃から食材に対する興味と敬愛が強い。
また、かつて有機野菜という言葉が定着していなかった時代、日本全国の生産者を支援するためのマーケットをレストラン地階に作り、
産直食材の販売を行うなど、日本全国の生産者を支援する取り組みにも余念がなかった。
現在も、料理人としてお客様の口に入るものには絶対的な責任を持ちたい、という姿勢を変える事なく、
“食を通して日本を元気に"全国の産地を訪問し続けている。

「KIHACHI四季のレシピ集」 春夏秋冬編 全4巻 (NHK出版)など多数
1946年 東京生まれ
フランス アルパッジョン料理コンクールにおいて、プロスペールモンターニエ杯を受賞
日本エスコフィエ協会 正会員
全日本司厨士協会 東京総本部副会長
日本フードコーディネーター協会 顧問 
東京農業大学 客員教授
日本食生活文化財団「食生活文化賞 銀賞」受賞
厚生労働省「卓越技能章 現代の名工」受章
「黄綬褒章」受章
(KIHACHI様Webサイト掲載分引用)

ご家庭向けのレシピ

材料  二人分

作り方

阿波尾鶏もも肉、むね肉 350g
阿波尾鶏レバー,ハツ ,砂肝 各適宜
しいたけ ,エリンギ ,しめじ ,えのき茸,
舞茸 ,ひら茸など
各適宜
ごぼう 1/2本
せり 1/2束
万能ねぎ 1/3束
豆腐 (絹) 1/4丁(一丁350g)
白玉粉 37.5g
500cc
鶏ガラスープの素(無塩) パッケージの表示参照
オイスターソース 14g
各1個
割り下(*を合わせたもの) 250cc
*酒 45cc
*醤油 115cc
*みりん 70cc
*砂糖 42g
  • もも肉とむね肉は皮をはがし、身は薄いそぎ切りにし皮は細切りにする。
    レバー、ハツ、砂肝は固いところを除いてそぎ切りにする。
  • きのこは石づきを取り、しいたけは4等分、エリンギは薄切り、他のきのこは食べやすい大きさに分ける。ゴボウは斜めに薄く切ってから千切りにし、水に放しておく。
    せりと万能ねぎは7cm長さに切る。
  • 豆腐に白玉粉を混ぜ、耳たぶくらいの柔らかさになったら、2.5cm位の団子に丸め、中央を押して平たくし沸騰した湯で茹で、水に取る。
  • 大皿に1、2、3を盛り付ける。
  • *を合わせて火にかけ、アルコール分を飛ばして割り下を作る。
  • 土鍋に分量の水と鶏ガラスープの素を入れ、5の割り下250ccとオイスターソースを加えて鶏皮を入れ、煮立ってきたら他の材料を煮ながら各自卵につけて食べる。
    好みで七味をいれてもよい。