シェフが愛する阿波尾鶏極上レシピ集

阿波尾鶏の春(鶏もも肉のくわ焼き)

第3回 テストキッチンH 山田宏巳シェフの阿波尾鶏を使ったイタリアン3皿

プロに学ぶ阿波尾鶏、第三回は阿波尾鶏の部位を活かした家庭で美味しくできるプロのイタリア料理を教えていただきました。

レシピ1:阿波尾鶏ハツのペペロンチーノ

材料 4人分

阿波尾鶏ハツ 20個
適宜
スパゲティ(乾麺) 400g
にんにく 6片
唐辛子 4本
オリーブイル 大さじ6

作り方

  • にんにく2片は半分に切り、残りは薄切にして素揚げ。 唐辛子は種を除きちぎる。
  • ハツは半分に開き、筋を断つように包丁目を入れ、ステンレス皿に開いた面を上に並べ、強めに塩をする。熱したテフロンのフライパンに蓋をするように一度に入れ、皿で軽く押すように1分焼く。火を止め、返して余熱で裏も火を通す。
  • スパゲティは1%の塩を入れた湯で茹でる。
  • フライパンにオリーブオイル、半分に切ったにんにく、唐辛子を入れて弱火にかける。にんにくがきつね色になったら取り出し、強火にしてパスタの茹で汁50ccを加えてオイルとよく混ぜ、3を加え手早く絡めて盛りつけ、2と素揚げのニンニクをのせる。
作り方素材 調理風景1
HIROMI’S POINT HIROMI’S POINT

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  • ハツは心臓で、筋肉や血管が集中しているので、新鮮さが大事。厚みを半分にして開き、筋肉を断つように隠し包丁を入れ、上からバットか何かで抑えるようにして開いた面から強火で焼きます。転がさず平面的に焼いて、火を止め、外側は余熱でさっと火を通すだけ。

レシピ2:阿波尾鶏もも肉白いラグーソーススパゲティ

材料 4人分

阿波尾鶏もも肉 1枚(約400g)
オリーブオイル 大さじ3
にんにくみじん 大さじ1
長ねぎみじん 大さじ2
練りごま 大さじ1
チキンスープ※ 200cc
スパゲティ(乾麺) 400g
パルミジャーノ・レジャーノ 大さじ4
白こしょう 適宜

作り方

  • もも肉はフードプロセッサーでひき肉状にする。
  • 鍋にオリーブオイルとにんにくを入れ弱火にかけ、にんにくの香りがしたら1を入れ、ポロポロと細かくなるように炒める。
  • 2に練りごまと長ねぎを加えてさらに炒め、チキンスープを入れ、20分ほど煮込む。
  • スパゲティは1%の塩を入れた湯で茹でる。
  • 4を3に加え、よく絡めて皿に盛り、パルミジャーノ・レジャーノチーズ、オリーブオイル(分量外)をかけ、白コショウをふる。

    ※チキンスープは市販のスープの素を使う場合、やや薄めに使います。
作り方素材
HIROMI’S POINT

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  • 阿波尾鶏の美味しさを引き立てるため、強い甘みの玉ねぎは使わず、長ネギで。隠し味に練り胡麻を加えます。

レシピ3:阿波尾鶏むね肉のしっとりロースト レバーソース添え

材料 4人分

阿波尾鶏むね肉 2枚
阿波尾鶏レバー 250g
玉ねぎみじん 大さじ2
*アンチョビフィレみじん 1/2枚分
*にんにくみじん 小さじ1
*ケイパーみじん 小さじ2
*セージの葉みじん 1枚
*レモンの皮みじん 小さじ1
白ワインビネガー 大さじ1
白ワイン 大さじ1
チキンスープ※ 200cc
オリーブオイル 大さじ3
適宜

作り方

  • レバーは包丁でなめらかになるまで叩く。
  • 鍋にオリーブオイル大さじ2と玉ねぎを入れて火にかけ炒め、レバーを加えてさらに炒める。レバーは水分が飛び、香ばしいにおいに変わるまで焦がさないようよく炒める。
  • 2のレバーの中央にスペースを作り、残りのオリーブオイルと*を入れて軽く炒め、白ワインビネガーと白ワインを加え煮立たせ、チキンスープを加えて時々かき混ぜながらほぼ水分がなくなるまで煮る。
  • むね肉はしっかりめに塩をふり、厚めのビニール袋に入れ空気を抜いて口をしっかり閉じ、60℃で20分湯煎にかける。
  • テフロンのフライパンを熱し、4を皮から焼き、きつね色になったら裏も1~2分焼く。
    アルミホイルに包んで5分休ませ、そぎ切りにする。3と盛り付ける。
    ※チキンスープは市販のスープの素を使う場合は、やや薄めに使います。
作り方素材 調理風景1 調理風景2
HIROMI’S POINT HIROMI’S POINT

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  • むね肉はビニール袋に入れて空気を抜いた後、60℃で茹でます。低温で加熱することで、旨みを逃さず、パサつきやすいむね肉もしっとり。皮はパリッと焼いて仕上げます。
    レバー特有のにおいを抜くためのポイントは2つ。包丁でよく叩くこと。水分がなくなるまで根気よく炒めることです。

インタビュー

Q:阿波尾鶏をご存知でしたか?
山田宏巳
徳島駅の近くに弟子がやっているイタリアンがあって、そこで一羽丸ごとのローストを食べたんだ。大きな鶏で美味しくて、すぐ店でも使ったよ。
阿波尾鶏は上品な旨みで脂身もすっきりしている。柔らかいけれど、ブロイラーほど柔らかいわけじゃなくて、肉を食べている歯応えもあるのがいいね。
Q.貞光さんの阿波尾鶏はさばいた後、一般には水で冷やすところを空冷しています。
山田宏巳
イタリアンは塩とオリーブオイルだけで味を決めるシンプルな料理だから、特に素材の美味しさやコンディションが大事。
阿波尾鶏は素材の状態がよく、火を入れてもふっくらみずみずしいね。ドリップが少ないのは空冷によるのかな。
ドリップが多い鶏は、料理する前に大事な旨みが逃げちゃうんだ。
料理は、1から10までの行程があったとして、1,2,3で手を抜いたら、仕上げの8,9,10をがんばっても挽回できない。どの段階にも「やるべきこと」、「やらないこと」に意味があるのだけど、0の段階である食材は、料理人の腕ではなんともできないから、信頼できる生産者とのつきあいは大切にしているよ。
Q:山田シェフのお好きな鶏料理は?
山田宏巳
香草入れたバターを鶏肉で巻いてフライにした、キエフって料理があって、レモンをぎゅっと絞って食べるんだ。
大きなチキンカツみたいな感じで、ウクライナの郷土料理なんだけど、鶏とバターは相性いいね。
Q:イタリア料理では?
山田宏巳
伝統料理のディアボラは、皮はぱりっと香ばしく、身はしっとりジューシーに焼き上げるから鶏本来の美味しさが味わえるよ。
鶏を開いて手羽先を挿してローストする料理で、悪魔がマントを広げたように見えるからディアボラ=“悪魔風”って言われているんだ。
Q:日本の家庭料理では?
山田宏巳
鶏と言えばやっぱり唐揚げ!
京都の烏丸御池に「とり安」って店があって、ごはんに鶏の唐揚げをのせて、だしのきいた玉子がかかっている丼が昔から好き。揚げた鶏は美味しいよね、玉子のふわふわと、いいとこ取りの変わり親子丼なんだ。
Q:家庭で美味しくできるプロのイタリア料理をお願いしました。
山田宏巳
今日は阿波尾鶏のいろいろな部位を活かした料理を3品作るよ。
パスタは2つ。
ひとつはハツを入れたペペロンチーノ。ハツを美味しく焼いて「ハツ恋の味」なーんて。ハツは心臓で血管が集中している上、筋肉もある部位だから、なるべく縮まないように開いて隠し包丁を入れ、開いた面を押えるようにして短時間で火を通します。

もも肉は阿波尾鶏の美味しさを凝縮した白いミートソースに。
鶏を主役にするには、玉ねぎやトマトは甘みや旨みが強いので、野菜は長ネギとにんにくのみ。胡麻ペーストが隠し味。

むね肉はレバーソースを添えてメインディッシュに。
むね肉は低温で加熱後、表面にぱりっと焼き目をつけ、しっとりジューシーに仕上げます。
レバーは苦手な人も食べられるよう、独特の臭みを抜きます。最初にしっかり叩いて、水分を飛ばすように時間をかけて炒め、アンチョビやセージ、レモンの皮、水を加えて炊いていきます。
Q:テストキッチンH は、テーブル近くでシェフ自ら切り分けてくれる出来たてハムなど、お料理も空間もダイナミックですね。
山田宏巳
この店は「巨大な厨房の中でお客さんが食事する」みたいなイメージで作ったんだ。
子供の頃、台所でするつまみ喰いって美味しかったでしょ。
大きな店だから大きな料理がしたかったんだけど、自家製ハムって他にはなかなかないよね。
料理を運ぶとお客さんの反応がダイレクトに分かるのもいいところ。
「皮がぱりっと香ばしくて、身がジューシー!」「パスタがプリッとアルデンテで美味しい!」いつもお客さんのほめ言葉をイメージして作っているよ。
Q:今年は料理人として50周年の節目ですね
山田宏巳
うまいものを食べて、俺ならこうやるって考えながらずっと独学で料理してきました。
いま65歳だけど90歳くらいまでやるつもり。古いって言われたくないよね、死ぬときが完成だと思っているから、まだまだ勉強するよ。
生まれ変わってもイタリアンシェフがやりたいな。食いしん坊なんだけど、人が作ったもの食べるだけじゃ嫌で、やっぱり自分で料理する人生がいいね。

シェフのプロフィール

HIROMI YAMADA
山田宏巳

「テストキッチンH」オーナーシェフ。
16歳でイタリア料理界に入り、都内数店の料理長を経て、TV「料理の鉄人」で勝利し一躍人気をはくす。1995年南青山に「リストランテ・ヒロ」をオープン。1999年イタリアの料理専門誌「ガンベロロッソ」で“最も期待できる料理人”に選ばれ、2000年の沖縄サミットではイタリア首相の専属料理人を務めた。2009年サンセバスチャンガストロノミー日本代表として参加。
冷製パスタを日本で初めて取り入れるなど、80年代後半のイタメシブームを作った立役者のひとり。
2019年東京・青山に100席のオープンキッチン「テストキッチンH」をオープン、イタリア料理界を牽引し続けている。
著書に「天国と地獄のレシピ」(商業界)、「旬感パスタ」(日本文芸社)など多数。